海外製農機が日本で広がらないのは、価格でも性能でもない。
2026/09/12
海外の展示会へ行くと、日本ではまだ見たことのない農機に出会うことがあります。
・作業が速い。
・今まで人がやっていた仕事を機械化できる。
・一台でいくつもの作業ができる。
「これは日本でも需要があるのではないか」
そう思える機械は少なくありません。
ところが、日本へ持ってきて販売を始めてみると、思ったほど簡単には広がらない。
価格が高いから?
海外メーカーだから?
日本の農家には合わないから?
もちろん、それらが理由になることもあります。
ただ、農機を購入する側の立場で考えてみると、もう一つ大きな理由があります。
それが「買った後、本当に大丈夫なのか?」
という不安です。
農家は、機械だけを見て購入を決めているわけではない
例えば、初めて見る海外製農機が展示会に並んでいたとします。
・実演を見ると、かなり便利そうです。
・自分の作業にも使えそう。
・価格も、作業効率を考えれば検討できる範囲だった。
それでも、購入を決める前にはいろいろなことを考えます。
「故障したら誰が直してくれるんだろう」
「部品はすぐに入るのか」
「使い方が分からなくなったら誰に聞けばいいのか」
「数年後もちゃんと対応してもらえるのか」
農機は、農繁期に使うものです。
「部品が届くまで数週間待ってください」では困ることもあります。
だから農家は、機械の性能と同じくらい、購入後に誰が支えてくれるのかを見ています。
日本製農機には、すでに「安心」があります
長年使われている国内メーカーには、機械そのものだけではなく、地域に積み重ねてきたものがあります。
・近くに販売店がある。
・整備できる人がいる。
・部品について相談できる。
・困ったときに電話できる人がいる。
農家にとっては、これらも含めて一つの商品です。
一方、日本へ入ってきたばかりの海外製農機には、この「地域で支える環境」がまだ十分にありません。
性能だけを比べれば海外製品の方が優れている部分があったとしても、
「何かあったときに、いつもの農機店へ相談できる」という安心感は、とても大きなものです。
新しいメーカーが日本で広がる難しさは、ここにもあります。
だからといって、全国に整備拠点をつくるのは難しい
では、海外メーカーや輸入元が全国に営業所やサービス拠点をつくればいいのか。
理想を言えば、そうかもしれません。
しかし、まだ販売台数が少ない段階から全国に拠点を構えるのは現実的ではありません。
・人を採用する。
・整備工場を用意する。
・部品を在庫する。
・サービスカーを用意する。
一つの地域へ進出するだけでも、大きな投資が必要になります。
売れるかどうか分からない地域に、先にそこまでの投資をするのはメーカーにとって大きなリスクです。
ここで重要になるのが、すでにその地域にある農機店との連携です。
「販売代理店」になる前に、商品を知ってもらう
地域の農機店に「この海外製農機を販売してください」
とお願いしても、すぐには難しいでしょう。
農機店側も、その機械を知りません。
整備した経験もありません。
お客様がどんな反応をするのかも分かりません。
だったら、最初から販売をお願いしなくてもいいと思います。
まず、実際の機械を見てもらう。
・触ってもらう。
・農家へのレンタルに関わってもらう。
・貸し出し前後の状態を確認してもらう。
・簡単な点検や整備を経験してもらう。
そうすることで、農機店側にも少しずつ製品の知識が蓄積されていきます。
農家だけでなく、整備する側にも製品を体験してもらう。
海外製農機を日本へ広げるうえでは、ここが意外と重要なのではないでしょうか。
1回のレンタルが、販売だけでなく整備体制もつくる
レンタルというと「農家に試してもらって、購入につなげるもの」
というイメージが強いと思います。
しかし、メーカー側から見ると、それだけではありません。
例えば、地域の農機店を通して1台貸し出す。
・貸し出す前に機械を確認する。
・農家へ操作説明をする。
・返却後に機械の状態を見る。
・必要ならメーカーへ問い合わせる。
こうした経験を何度か繰り返せば、その農機店には製品についての知識が残ります。
そして、その地域で購入したい農家が現れたとき、
「この機械なら触ったことがあります」
と言える農機店が近くにいる。
これは購入する農家にとって、大きな安心材料になります。
「売れてから整備網をつくる」では遅い
新しい地域へ商品を広げるとき、
まず販売する→台数が増えてきたら整備拠点をつくる。
という順番を考えがちです。
しかし農機の場合、購入前に「誰が直してくれるの?」と聞かれます。
つまり、売れた後に整備体制を考えるのではなく、販売する前から最低限の安心を見せる必要があります。
だからこそ、
レンタルで地域へ機械を入れる。
↓
農機店が機械に触れる。
↓
農家にも使ってもらう。
↓
農機店に知識と経験が残る。
↓
購入相談が出る。
↓
販売・整備へつながる。
この順番には意味があります。
メーカーが全国に工場を持たなくても、全国を支えられる可能性
日本には、各地域に農機を整備している農機店があります。
長年その地域の農家を支え、田植機、トラクター、コンバインなど、さまざまな機械を直してきた人たちです。
この既存の整備力と、新しいメーカーの商品をつなぐことができれば、メーカー自身がゼロから全国に整備網をつくる必要はなくなるかもしれません。
もちろん、専門的な修理や部品供給、技術情報など、メーカー側の支援は必要です。
すべてを農機店へ任せるという話ではありません。
メーカーが技術を提供し、地域の農機店が現場を支える。
そんな役割分担ができれば、新しいメーカーにとって全国展開のハードルは下がります。
nRnsが考える「地域で支える」ということ
nRnsでは、農機を農家同士で直接貸し借りするのではなく、地域の農機店が間に入ります。
そこには理由があります。
農機は、ただ貸せればいい商品ではないからです。
・機械の状態を見る人がいる。
・操作について相談できる人がいる。
・返却後に確認する人がいる。
そして、その地域に機械のことを知っている人が残る。
メーカーのデモ機や新しい農機をレンタルする場合も、この仕組みを活用できます。
最初は一台のレンタルだったとしても、その経験が地域に残れば、将来その商品を販売するときの土台になります。
全国展開で増やしたいのは「販売店」だけではない
全国展開というと、
「代理店を100店舗にする」
「販売エリアを全国にする」
といった数字に目が向きます。
もちろん、それも大切です。
でも、本当に商品を長く使ってもらうためには、
「この地域なら、この人に相談できる」
という場所を増やすことも必要です。
特に、まだ日本で知られていない海外製農機ならなおさらです。
性能の良さを伝える。
実際に使ってもらう。
そして、使った後も地域で支えられる環境をつくる。
ここまでできて、初めて「日本で売れる商品」から「日本で使い続けられる商品」になっていくのではないでしょうか。
良い機械を輸入するだけでは、全国展開は完成しない
海外には、日本の農業が抱えている課題を解決できる面白い農機がまだまだあります。
だからこそ、良い機械を見つけて日本へ持ってくるだけで終わらせたくありません。
その機械を、
・誰が農家へ届けるのか。
・誰が使い方を伝えるのか。
・誰が困ったときに支えるのか。
そこまで含めて仕組みをつくる。
海外製農機が日本で広がるために必要なのは、価格を下げることでも、性能をさらに上げることでもなく、
「この機械なら、買った後も大丈夫」
と思ってもらえる環境なのかもしれません。

